Questionnaire with Theseus Chan Part 1
By courtesy of TAXI design network/HCA http://designtaxi.com/
シンガポールのクリエイティブシーンで最も影響力を持つパイオニア、テセウス・チャン。今や彼の元には国内外から続々と仕事のオファーが押し寄せているが、活動をスローダウンさせる気配はない。商業的な制約にクリエイティブなアイディアを抑えつけられることもなく、自由奔放なコンセプトに落とし込み、具現化することを大いに楽しんでいるようだ。そんな彼の新たなプロジェクトや動向に、世界中の人々が胸躍らせつつ熱いまなざしを注ぐのも当然といえるだろう。
Q あなたは2006年に「プレジデンツ・デザイン・アワード」の「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、2008年には同賞ビジュアル・コミュニケーション部門の審査員に選出されましたね。こうした権威ある賞の受賞は、デザイナーやクリエイターが作品をより良いものにするために役立つでしょうか?
A デザイナーやクリエイターにとって受賞者だと認識されるということは、今や自分たちが提示したもので他者を触発することが義務であり責任になったということです。
Q シンガポール政府はここ数年、シンガポールをデザイン/クリエイティブ分野のハブ(ネットワークの中心地)にするためのプロモーションに多額の投資を行っていますね。その結果として、なにか大成功したとか、あるいは惨めな失敗に終わった事例が思い浮かびますか?
A 政府がデザイン/クリエイティブ産業にますます注目しているのは知っていますが、そうした政策が成功あるいは失敗した事例について関心を寄せたことはありません。ただ、数字や統計が示す結果以上に、デザインカルチャーを打ち立てることそれ自体がシンガポールの人々の感覚にもたらすであろう変化に、より注意が払われるべきだとは思います。
Q 音楽好きであること、ことにデルタ・ブルーズへのあなたの愛が仕事に与えてきた長年の影響について教えて下さい。
A ミシシッピ・デルタの奴隷たちが直面した抑圧は、「コール・アンド・レスポンス」というコミュニケーションの手法を生み出しました。この「発明」によって、抑圧された人間の物語を歌で表現できるようになったのです。デルタ・ブルーズ、カントリー・ブルーズ、シカゴ・ブルーズ、テキサス・ブルーズ。エレクトリックなものからアコースティックなものまで、ブルーズならなんでも好きです。そこから得たインスピレーションを仕事に生かしています。
Q あなたが主宰するWORK は、デザインと広告表現のあらゆる領域で、人々からリアクションを得ることを目指してさまざまなプロジェクトを手がけています。消費者から届けられ得る最良のリアクションとはどのようなものだと思いますか?
A こちらが予想だにせず、かつインスピレーションを与えてくれるようなリアクションというのは、ずっと印象に残りますね。
Q あなたは以前、シンガポールのデザインシーンが「トレンディになり過ぎてきている」と言っていましたが、言い足すべきことがあるのではありませんか。いまでも状況は変わりませんか。
A トレンディであるということは、すでに“確立されたもの”の一部になってしまったということです。明確な輪郭が与えられ、時代の主流が受け入れたものですよね。したがって、真に新しいものやオリジナルなものは、定義上トレンドに先行するわけです。
Q あなたは、物事に手を加え過ぎてはならず、むしろ自然発生的に起きることにまかせるべきだと強く提唱してきました。そのようなスタイルで行ってきたこれまでの仕事の中で、思い出深いコラボレーションを挙げて下さい。
A 『WERK magazine』、『Pedderzine』、 シンガポールの「コム デ ギャルソン ゲリラストア」の内装……。
Q 世界のクリエイターたちが今注目すべきひとつの国、ひとつの都市があるとすればどこでしょうか。また、なぜそう思われますか。
A 才能とチャンスと手段があれば、どこにいても物事を成し遂げることはできます。この惑星もずいぶん小さくなりましたからね。
(January 19, 2009)
原文URL:http://designtaxi.com/features.jsp?id=100519
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